僕のことが好きな2人

 一時間目の歴史は全く頭に入ってこなかった。ぼーっとしていると先生に当てられたけど、なんとか近くの席のクラスメイトに助けてもらった。
 授業終了のチャイムと同時にカバンを持って、透の手を引いて教室を出た。
 そのまま階段を駆け上がって屋上に上がった。
「なんだよ急にー俺まだ準備も何もしてないんだけどー」
「一瞬だから、一瞬」
 カバンの中から二枚の手紙を引き出す。
「え、なにそれ?手紙?告白ぅ?」
 透は手紙を見て、驚いたみたいだ。そりゃそうだろう。よりよってクラスの中心にいる訳でもない僕なんだから。
 僕は手紙を透に渡した。いいの?、と僕に聞いた後手紙をそっと開けて、文章を読んだ。
 まずは美織の手紙、次に葉夏の手紙と順に読んだ。透の顔も徐々ににやけ始めている。
 透は二つの手紙を読み終わった後、手紙を僕に返した。
「旬すごいな。あの二人から告白されるたら羨ましすぎるぞ」
「だよな。もうなんか心臓がやばい」
「そりゃそうだろうな、なんかお前のこと恨むかも」
 おいおい、と僕たちは笑い合う。
「で、どっちにするんだよ?」
「どっちって言われてもな…両方行けたら良いんだけどなぁ」
「じゃあ両方行けば?」
 は?、と情けない声が僕の口から出た。
「いやいや、無理があるだろさすがにそれは」
「先に体育館に行って、俺が美織ちゃんは止めとくから」
 美織と話したいだけだろ、と心の中でツッこんでおく。でもそれなら二人と話すことができる。
「じゃあ透はそれでもいい?」
「いいよ。旬のためだよ」
 ほらもうチャイム鳴るって、と言いながら先に透は屋上を降りて行った。良い奴だなあいつやっぱり、心の中でそう思った。

 二時間目、三時間目…と放課後に近づいていく。
 帰りのホームルームが始まると、今まで感じたことないくらい体が熱く感じる。葉夏と美織は今どんな気持ちなんだろう、本当にあの体育館裏と教室にいてくれるのだろうか。
 二人に視線を向けるけど、特に変わらず担任の話を聞いていた。明日は避難訓練があるらしい、それだけ聞いていた。
 礼をした後、すぐに葉夏は教室を出て行った。僕も帰宅する波に流れて教室を出た。美織には申し訳ないけど、透にお願いすることにしよう。
 僕は靴を履き替えて、体育館の方に少しだけスピードを速めた。角を曲がると、…本当に葉夏はいた。
 いつも周りには誰かがいる葉夏が今日は一人だ。少しだけ風が吹いて、葉夏の短い髪がサラサラと靡く。折ったスカートの裾もヒラヒラと揺れる。
「来てくれてありがとう、旬君」
 いつも遠くから聞いていた彼女の声。そんな彼女が僕の名前を呼んでいる。まだ夢から覚めていない気持ちだ。
「うん」
 他に何を言えば分からなくて、小さい声で頷いた。
「あのさ好きな人っている?」
「ううん、いないよ」
 僕ははにかみながら答えた。葉夏は良かった、と小さく呟いた。
 スポットライトが当てられているように、日差しの強い太陽が僕たちを照らす。
「私旬君の笑ってる姿がすごく好きなんだ。何と言えばいいんだろう...素敵なんだよね」
 あまり言われたことのないことを言ってもらえて僕の顔が熱くなることを感じる。太陽のせいだよね。
「だからもし良かったら、その笑顔を私の物にしたいです」
 返事はまた教えて、と言って葉夏は顔を真っ赤にして走って行った。あ〜恥ずかしい〜、と顔を押さえながら走る姿が可愛い。
 僕は葉夏の言葉を思いながら、複雑な気持ちで教室に戻った。
 ガラガラ、とドアを開ければ透と美織がこっちを見る。僕が来たことに気づいた、透はカバンを持って教室を出た。
 掃除が終わった教室には、もう美織一人しかいなかった。
「遅くなってごめん」
 美織は長い髪を触り、耳を赤らめていた。
「ううん、全然大丈夫だよ」
 美織は深呼吸した後、「実は…」と続きた。
「いつも旬君のことを見ていて、さりげない優しさが本当にカッコイイなと思ってて、すごく好きです」
「回答はすぐ求めないから、もしよければ、私と付き合ってください」
 ストレートに美織は僕に気持ちを伝えてくれた。
「ありがとう、ちゃんと考えてまた答えさせてください」
 僕はそう答えると、美織はじゃあ私塾だから、と言って教室を出た。
 一人残された教室にはまだまだ沈まない西日が差し込んでいた。