女らしさを極めた妹が最恐だった

 妹のナタリーは激怒した、女らしさって何だよと!


 姉である私アリサは、荒れ狂う可愛い妹をなだめるため声をかける!



「ナタリー……物凄い荒れてるけど、婚約者と何かあったの?」



「お姉様?あのドカスは浮気してたあげく、私が女らしくないからと来たのよ!」




 まぁ……ガサツで口も悪いナタリーが女らしくないと言うのは間違ってないが……



「女らしさって何よ!私は生まれつき女よ!それのどこが悪いというのさ!」




 もっともである、私もその意見は分かる……しかし……




「女らしさってのは私もよく分からないけど、後から身に付くものなのよ!」




「はぁ?何それ、男らしさとかいう下らないものは私には興味無いけど、だって男は生まれつき男だから、男らしさじゃなくて、その人がいい人かどうかで判断してるけど!でもそんなわけのわからないことを言う奴こそ、男らしくねぇよって私は文句を言いたいね!」



「うん、それは正しそうだけど、そういうことを言うから女らしくないとか言われるんじゃない?」




「はぁ?何だそりゃ、つまり女らしさとは情けないヘタレのアホ男が、僕よりも強そうだと困るから、弱い振りをして下さいっていう情けないポーズなんですね!」




 うーん身もふたもないことを言えばそうなのかも……


 私が反論できないでいると……



「……分かったわ、つまり軟弱な男を騙すのが女らしいってことか!よし私は今日から女らしくなる!」



 ……何かおかしな方向に進んでいるが、ナタリーの目と雰囲気は本気なので、姉の私でも止められる気配がしないのであった!




 こうしてナタリーはどうやら変わった。



 今までは自分が着たい服を着ており、ドレスなども流石にマナー違反にならない範囲で、できるだけ機動性が良いものを着ていたナタリーだが、


 いかにも弱弱しくて動きにくくて守ってあげないといけないようなドレスに切り替えだしたのだ!




「お姉様?見てくれる?これで、馬鹿共が私がか弱いから守らないといけないって思うんじゃないかしら?」




「ナタリー?そんなことを言ったら駄目よ?」



「分かってるわ、もちろん馬鹿共の前では私無理なんですぅって態度を取るわよ!」





 ……ある意味ここまで突き抜けるナタリーはむしろ雄々しいのでは?って思うレベルだが、ナタリーはマジでブチ切れるとこうなのだ!極端と言うか何というか……!




 こうして近づいた令息相手に、ナタリーだが、


 いきなりドレスの裾を踏んで転ぶでは無いか!


 あちゃー慣れてないからかなと思ったら、ナタリーは……




「し……失礼しますわ!わ……私うっかりとドジをしてしまって……!」



 などとしおらしくしている!これで令息は気分を良くしたのか……



「いやいやナタリー嬢はかわいらしい!」



「お……お恥ずかしいですわ……!」



 などと顔を隠すナタリー……


 お前誰だよと姉としては思うのだが、ナタリーは徹底的に転んだのも含めて演技やってやがると分かったのであった!




 そして家に帰るとナタリーは開口一番、本音トークが始まった!



「馬鹿じゃねぇの?わざわざ動きにくいドレスを着て転ぶ令嬢とか、私ならば、そんなの着てるのが悪いバーカって思うけど、それで可愛いとか言ってる馬鹿が多いんだが、女らしさってほんまくだらねーな!」




 この暴言のオンパレードである。それでいながらよくあれだけ演技できるなと姉ながら恐ろしく思う!



「ナタリー本当にまだ続ける気?」




「当たり前じゃない、こんな下らないことをすれば馬鹿男共が私に色々利益をよこすってのなら容易いものよ!馬鹿はまともさよりも、馬鹿さを喜ぶんだから!自分が情けないから、格下が欲しいだけだろ!くだらねー!」




 ……圧倒的罵詈雑言!以前よりも口がさらに悪くなってしまった!(笑)



 こうしてナタリーは外では超淑女、家に帰ると罵倒女王とどんどんなっていったのであった!




 私達の家は子爵家なので貴族としてはたいしたこと無い。



 だがナタリーは最近可愛らしいと評判が上がったので、以前と違いモテだして、ついに侯爵令息様にまで声をかけられるのであった!





「ナタリー嬢君は素敵だよ、うっとりしちゃうね」



「は……恥ずかしいですわ、これ以上はおやめください!」


 などと顔を伏せているナタリー。あいつ絶対伏せた顔の下で舌を出して馬鹿にしてるのがバレバレである姉からすれば!




 しかしそこに現れたのが、最近のナタリーの台頭を気に食わないであろう伯爵令嬢であった!



 まずい、いざとなったら姉として助けないと!と思っていると……



「あらナタリーさん?前まではお転婆で有名だったのにどうしたのかしら?そういう演技、情けないわよ」


 渾身の嫌味を言う伯爵令嬢相手にどうするのかと思ったら……




「ひ……酷いですわ!私、前までは無理して男まさりしてたのに、それを否定するなんて!」



 言ってること意味が分からないが妙に悲しい雰囲気を出しているせいで、侯爵令息様が……



「君やめたまえ、ナタリーが困っているでは無いか!」


 などとかばいだすので、伯爵令嬢は悔しそうに帰っていくでは無いか!




 そして家に帰ると、



「あっはっはっはっはーあの馬鹿侯爵令息、あんなくだらねー演技に騙されて味方してやんの!昔の私なら大きなお世話!貴女に迷惑かかりましたか?って罵倒してやったけど、ほんま女らしさってチョロいなー!」



 何て言いたい放題。


 もう最近はナタリーが家に帰ったらどんな暴言を言うのだろうと、楽しみになってきている私がいる。


 まぁ何だかんだ私達姉妹仲いいですからね!




「それにさぁお姉様聞いてくれない?私が男に庇われた時の馬鹿女共の悔しそうな顔、正直癖になっちゃうわ!女らしくする女の気持ちが分かってきたわ!」



 ……なんてことだ、可愛いナタリーが悪女になってしまう!


 内心爆笑ではあるが、大丈夫かなと少しだけ心配になったりもしたのであった!




 こうして侯爵令息と付き合うのか?と思ったら、何と、公爵令息のリチャード様がナタリーに声をかけるでは無いか!




「やぁナタリー嬢、君の最近の美しさ、私と共にあるのにふさわしいと思わないか?」



 うーんナルシスト丸出しでぶっちゃけ私はドン引きするも、でも公爵令息様ってことで、モテモテなんだよなぁあの自信がいいらしいとか何とか、いや身分だろって思うけど!


 しかしナタリーは強気だった!



「あらリチャード様?私、付き合っている方がいるから無理ですのよ?」




 これでもう参ってしまったのがリチャード様だ!



 侯爵令息様とリチャード様でにらみ合うようになった!



「君のような下級貴族は引っ込んでいろ!」



「何を言うか、ナタリーは僕のものである!」




 ナタリーはおろおろした顔をしているが私は見切っている!



 今日は2人がにらみ合っただけだったが、家に帰ると……




「あーっはっはっはっはっはっは!いい大人の男が2人で争ってておもしれー女らしささいこー!」



 やはりな、絶対に大笑いしてると思った!




「ナタリー聞いていい?」



「何お姉様?」



「悔しがる令嬢と、争う2人とどっちが面白かったの?」



 正直何となく興味があるから聞くと……




「うーん悔しがる令嬢はざまぁ的な楽しさなんだけど、争う2人はさぁ、おもしろーみたいな感じで、違う感じの楽しみで比較はできないな!」






 なるほど!私も自分をめぐって男が争うなんて経験無いから、羨ましいとは思わないけど、変わった経験ができていいなと正直思ってしまったのである!


 いやこんなこと思ったらいけないことは知っていますが!




「でナタリーに聞くけど、どっちと付き合う気なの?」



「そうねぇ、もっと上っていないの?」



「ちょ……ちょっと待った!公爵令息のリチャード様よりも上ってなったら王子様になるわよ、そこは冗談にならないからやめておきなさい!」




「何でなのさ?」



「あのね、いくら何でも身分違いよ!それに王家は怖いのだから関わったらダメ、最悪貴族を平気で殺せる力があるのだから!」



「……そ…そりゃ怖いね、確かにこの辺りで手を打つのが一番か!じゃあ決めた!」




「どうするの?」



「最終的にはリチャードにするけど、散々2人を競わせておいて、リチャードにやっと手に入ったって形にしてやるわ!だから今は侯爵令息をヒイキしつつ、リチャードをたきつけてと……」



 まずい、ナタリーが本物の悪女になってしまった!



 女らしさを極めた結果、まさかこんなことになるなんて!


 我が妹ながら最恐ですわ!