笑顔の仮面は君の前だけ壊れる

「白石さん! 返事をして!」

扉の向こうから朝比奈さんの声が響く。

「ここです!」

私は何度も扉を叩いた。

数秒後、ガチャリと鍵の開く音がした。

勢いよく扉が開き、朝比奈さんが息を切らしながら立っていた。

「けがはない?」

「……大丈夫です。」

そう答えた瞬間、張りつめていた糸が切れたように力が抜けた。

朝比奈さんは安心したように小さく息をつく。

「よかった……。」

その表情は、本当に心配してくれているように見えた。

「誰が鍵を?」

私が尋ねると、彼は静かに首を振る。

「防犯カメラを確認してもらう。」

その言葉に少しだけ胸をなで下ろした。

もし彼が犯人なら、自分から防犯カメラの話はしないはず。

そう思った。

しかし、その夜。

帰宅した私のスマートフォンに、一通のメールが届く。

件名はない。

添付された写真を開いた瞬間、全身が凍りついた。

そこに写っていたのは、倉庫へ向かう私の後ろ姿。

そして、少し離れた場所から私を見つめる朝比奈さんの姿だった。

写真の下には、一行だけ文字が添えられていた。

『助けたんじゃない。最初から知っていただけ。』

思わずスマートフォンを落としそうになる。

朝比奈さんは、本当に偶然助けに来たの?

それとも――。

誰かが私に、そう思わせようとしているだけなの?

答えのない疑問だけが、静かに心を締めつけていった。