第26章 消された記憶
翌朝、私はペンダントを握りしめたまま会社へ向かった。
昨夜から眠れなかった。
頭の中では、佐伯真奈の言葉が何度も繰り返されている。
『犯人は、証拠ではなく人の記憶を消している。』
会社へ入ると、朝比奈さんが私を待っていた。
「少し話そう。」
会議室へ入ると、神崎主任も来ていた。
朝比奈さんは机の上に一冊の古いアルバムを置く。
「これは五年前の創立記念パーティーで撮った写真だ。」
私はページをめくった。
社員全員が笑顔で並んでいる。
その中には佐伯真奈も、朝比奈さんも、神崎主任も写っていた。
「何か気づかない?」
私はもう一度写真を見る。
違和感。
何だろう。
もう一枚、同じ日に撮られた写真を見る。
「あっ……。」
思わず声が漏れた。
「一人、多い……。」
朝比奈さんが静かに頷く。
「やっぱり気づいたか。」
一枚目には二十人。
二枚目には二十一人。
真ん中に立つ一人の男性だけが増えている。
「この人、誰ですか?」
神崎主任は苦しそうな表情を浮かべた。
「誰も覚えていない。」
「え……?」
「名簿にも名前がない。」
「でも写真には写っています。」
「だからおかしいんだ。」
部屋に沈黙が落ちる。
朝比奈さんはアルバムの最後のページを開いた。
そこには集合写真が一枚だけ貼られていた。
しかし、中央の人物だけがナイフのようなもので丁寧に切り抜かれている。
裏には佐伯真奈の字で書かれていた。
『この人を思い出した時、事件は終わる。』
その瞬間、私のスマートフォンが震えた。
非通知。
恐る恐る出ると、あの声が聞こえた。
「思い出してはいけない。」
静かな笑い声。
「思い出した人から、消えていく。」
通話は切れた。
私は窓の外を見つめる。
会社の向かい側。
黒い傘を差した人物が、じっとこちらを見上げていた。
その人物はゆっくりと右手を上げる。
まるで――
「思い出せ。」
そう合図を送るように。
翌朝、私はペンダントを握りしめたまま会社へ向かった。
昨夜から眠れなかった。
頭の中では、佐伯真奈の言葉が何度も繰り返されている。
『犯人は、証拠ではなく人の記憶を消している。』
会社へ入ると、朝比奈さんが私を待っていた。
「少し話そう。」
会議室へ入ると、神崎主任も来ていた。
朝比奈さんは机の上に一冊の古いアルバムを置く。
「これは五年前の創立記念パーティーで撮った写真だ。」
私はページをめくった。
社員全員が笑顔で並んでいる。
その中には佐伯真奈も、朝比奈さんも、神崎主任も写っていた。
「何か気づかない?」
私はもう一度写真を見る。
違和感。
何だろう。
もう一枚、同じ日に撮られた写真を見る。
「あっ……。」
思わず声が漏れた。
「一人、多い……。」
朝比奈さんが静かに頷く。
「やっぱり気づいたか。」
一枚目には二十人。
二枚目には二十一人。
真ん中に立つ一人の男性だけが増えている。
「この人、誰ですか?」
神崎主任は苦しそうな表情を浮かべた。
「誰も覚えていない。」
「え……?」
「名簿にも名前がない。」
「でも写真には写っています。」
「だからおかしいんだ。」
部屋に沈黙が落ちる。
朝比奈さんはアルバムの最後のページを開いた。
そこには集合写真が一枚だけ貼られていた。
しかし、中央の人物だけがナイフのようなもので丁寧に切り抜かれている。
裏には佐伯真奈の字で書かれていた。
『この人を思い出した時、事件は終わる。』
その瞬間、私のスマートフォンが震えた。
非通知。
恐る恐る出ると、あの声が聞こえた。
「思い出してはいけない。」
静かな笑い声。
「思い出した人から、消えていく。」
通話は切れた。
私は窓の外を見つめる。
会社の向かい側。
黒い傘を差した人物が、じっとこちらを見上げていた。
その人物はゆっくりと右手を上げる。
まるで――
「思い出せ。」
そう合図を送るように。

