笑顔の仮面は君の前だけ壊れる

翌朝。

出社すると、私のデスクには温かいカフェラテが置かれていた。

「おはよう。昨日、甘いものが好きって話してたでしょ?」

振り返ると、朝比奈さんがいつもの笑顔で立っていた。

「ありがとうございます。でも、どうして……?」

「昨日、休憩室で話してたのを聞いただけ。」

そう言って笑う彼に、不自然さはなかった。

昼休み。

同期の美咲が小声で話しかけてきた。

「琴葉、朝比奈さんと仲良くなったの?」

「え? そんなことないよ。」

「……なら、いいけど。」

言葉を飲み込む美咲の表情が気になった。

仕事を終え、会社を出る。

駅へ向かう途中、ふとバッグを見ると、朝は入れた覚えのない折りたたみ傘が入っていた。

『今日は雨が降るから。風邪ひかないでね。』

小さなメモが添えられている。

空を見上げると、まだ青空だった。

私は思わず辺りを見回した。

誰もいない。

だけど、どこかで誰かに見られているような気がして、胸がざわついた。