笑顔の仮面は君の前だけ壊れる

第13章 監視される日常

「写真が……ない。」

私は何度も床を見渡した。

ロッカーの中も、足元も、どこにも落ちていない。

「そんな……。」

美咲も信じられないという顔で辺りを探している。

「さっきまであったのに。」

更衣室には私たち二人しかいない。

それなのに、一枚の写真が消えた。

「ここを出よう。」

美咲は私の腕をつかみ、更衣室を後にした。

廊下へ出ると、二人とも無言だった。

その沈黙を破ったのは、美咲だった。

「琴葉、今日から一人で行動しないで。」

「え?」

「お願いだから。」

いつも明るい美咲の瞳は、本気で怯えていた。

その日の帰り道。

駅へ向かって歩いていると、ショーウインドーに自分の姿が映る。

その後ろを、一人の男性が歩いていた。

黒い帽子を深くかぶり、顔は見えない。

振り返る。

誰もいない。

もう一度ガラスを見ると、その男性の姿も消えていた。

「気のせい……?」

そう自分に言い聞かせた瞬間、スマートフォンが震えた。

画面には、一枚の写真。

それは、今この瞬間、ショーウインドーの前に立つ私だった。

撮影されたばかりの写真。

添えられたメッセージは、たった一行。

『今日もよく似合ってる。』

背筋が凍る。

私は急いで周囲を見回した。

行き交う人々は、誰も私を見ていない。

でも、その中に――。

私を見つめている誰かが、確かにいる気がした。

その頃。

会社の屋上では、朝比奈が一人、携帯電話を耳に当てていた。

「……もうやめろ。」

いつもの穏やかな声ではなかった。

低く、怒りを押し殺したような声が、夜風に消えていく。

電話の相手は何も答えない。

ただ静かに、通話だけが切れた。