大型犬男子は、今日も私を甘やかす【完】

言葉を探すように口を開きかけては、何も出てこないまま、ゆっくりと玄関の方へ後退していく。

靴を掴む手が震えている。

次の瞬間、逃げるように玄関の扉を開け、転がるように外へ飛び出した。

足音はすぐに遠ざかり、夜の静けさだけが戻ってくる。

残されたのは、息を殺したような沈黙だった。

さっきまでそこにいた“陸斗”は、もう別人みたいに見える。

表情は変わらないのに、目だけが笑っていない。