熱く胸を焦がして

 真っ暗な夜の山道は、人は当然、他の車さえいない。
 彼の暮らす移住者向けの宿舎は、空き家をリノベーションしたものだった。
「悠くん!」
 周りに人がいないのをいいことに、勢い任せにドアを叩く。
 そっとドアが開き、気づけば彼の腕の中に居た。

 私たちは、季節外れの花火に火をつけた。
「萌美と初めて会った時に、目の裏に映った景色みたいだよ、この花火。一目惚れなんて初めてで、自分でも驚いた」
 悠くんが呟く。
「ホント、この町に移住してよかったよ」
「そういえば、アウトドア好きが高じてここに来たって言ってたよね」
「最初はそうだった。でも、もう今はそれだけじゃない」
 ふいに、祖母の「今夜は帰ってこなくていい」という言葉が蘇り、私のほうからそっと彼に口づけた。