今日は7月に応募したコンクールの結果発表の日。
納得いく作品にはなったし、もしかしたらという気持ちとそんな簡単に行く訳ないよなという気持ちの2つで揺れている。
まあ、考えたところで結果は変わらないし、人に認められるために写真を撮っている訳じゃないから。
呆気なく落選しても大丈夫。
そんな言い訳を生成しながら、私はパソコン室へ向かう。
白い身体の羽の先だけが黒く染まったユニカモメが、雲の上を滑らかに飛んでいく。
羽をYの字に上下させて、美しく。
窓の切れ端で見送って、私は上履きを廊下の端に脱ぎ捨てて、パソコン室のドアを開けた。
もう、みんな集まっている。
「よし、これで全員だね」
顧問の先生から託されてきて、まだ明けていないというコンクール結果の入った便箋を部長さんが慎重に千切っていく。
「ビリ…」
髪が避ける乾いた音が部屋の静寂を切り裂く。
三つ折りに折り畳まれたA4の紙をひと思いに開いた。
『最優秀賞 黒川湊「陽炎の向こう」
優秀賞 白川凪「静謐の夏」
奨励賞 安藤美咲「真昼の青」
佳作 一条世那「光に解ける」、七瀬小春「水飛沫」、長谷川迅「砂浜の影」
入選 外村玲「境界線」、井上咲「波のリズム」、田中雄馬「夏の匂い」、高橋沙羅「夏の奥」』
自分の名前を見つけた瞬間、心臓が一つ跳ねて、呼吸が浅くなる。
分かった途端、耳の奥が熱くなって、静かな高揚が満ちていく。
「凪ちゃん。凄いじゃん」
先輩は髪の毛がくしゃくしゃになるくらいに頭を撫でる。
前髪が潰されて、視界が塞がれる。
前が見えない。
こんな褒め方、鬱陶しいのに、身体に熱が広がっていくように熱くなる。
耳、絶対に赤いな。
先輩が佳作で、部長さんが入選。
「この写真、いいよね。凪ちゃんらしくて」
先輩の声で、思考は掻き消される。
みんなが去った後の教室、鳩尾を熱されたような変な感覚が残っている。
先輩はそのまま静かに自分の写真を眺めていた。
「いやー、凪ちゃん凄いよ」
気まずい空白を埋めるように、賞賛の言葉を再び縫い出す。
「ありがとうございます」
でも、その表情は合ってない。
目が笑えてない。
「先輩の写真、私は好きですよ」
陸上部がグラウンドで、額に汗を滲ませながらゴールテープの一点をじっと見つめる写真。
全ての熱意が凝縮されているようで、綺麗。
虚を突かれた顔。
作り笑いが一時停止して、瞳が大きく露わになる。
呼吸が止まったように固まって、視線だけが鋭くこちらを見つめる。
「そっか。なら、いいか」
目の奥に光が差し込まれたように、表情が一気に緩くなった。
先輩はそのまま、扉を開けて行ってしまう。
窓の外は、水族館の鰯の大群のように強烈に染め上げられていた。
建物の淵の闇がゆらりと侵食されていく。
納得いく作品にはなったし、もしかしたらという気持ちとそんな簡単に行く訳ないよなという気持ちの2つで揺れている。
まあ、考えたところで結果は変わらないし、人に認められるために写真を撮っている訳じゃないから。
呆気なく落選しても大丈夫。
そんな言い訳を生成しながら、私はパソコン室へ向かう。
白い身体の羽の先だけが黒く染まったユニカモメが、雲の上を滑らかに飛んでいく。
羽をYの字に上下させて、美しく。
窓の切れ端で見送って、私は上履きを廊下の端に脱ぎ捨てて、パソコン室のドアを開けた。
もう、みんな集まっている。
「よし、これで全員だね」
顧問の先生から託されてきて、まだ明けていないというコンクール結果の入った便箋を部長さんが慎重に千切っていく。
「ビリ…」
髪が避ける乾いた音が部屋の静寂を切り裂く。
三つ折りに折り畳まれたA4の紙をひと思いに開いた。
『最優秀賞 黒川湊「陽炎の向こう」
優秀賞 白川凪「静謐の夏」
奨励賞 安藤美咲「真昼の青」
佳作 一条世那「光に解ける」、七瀬小春「水飛沫」、長谷川迅「砂浜の影」
入選 外村玲「境界線」、井上咲「波のリズム」、田中雄馬「夏の匂い」、高橋沙羅「夏の奥」』
自分の名前を見つけた瞬間、心臓が一つ跳ねて、呼吸が浅くなる。
分かった途端、耳の奥が熱くなって、静かな高揚が満ちていく。
「凪ちゃん。凄いじゃん」
先輩は髪の毛がくしゃくしゃになるくらいに頭を撫でる。
前髪が潰されて、視界が塞がれる。
前が見えない。
こんな褒め方、鬱陶しいのに、身体に熱が広がっていくように熱くなる。
耳、絶対に赤いな。
先輩が佳作で、部長さんが入選。
「この写真、いいよね。凪ちゃんらしくて」
先輩の声で、思考は掻き消される。
みんなが去った後の教室、鳩尾を熱されたような変な感覚が残っている。
先輩はそのまま静かに自分の写真を眺めていた。
「いやー、凪ちゃん凄いよ」
気まずい空白を埋めるように、賞賛の言葉を再び縫い出す。
「ありがとうございます」
でも、その表情は合ってない。
目が笑えてない。
「先輩の写真、私は好きですよ」
陸上部がグラウンドで、額に汗を滲ませながらゴールテープの一点をじっと見つめる写真。
全ての熱意が凝縮されているようで、綺麗。
虚を突かれた顔。
作り笑いが一時停止して、瞳が大きく露わになる。
呼吸が止まったように固まって、視線だけが鋭くこちらを見つめる。
「そっか。なら、いいか」
目の奥に光が差し込まれたように、表情が一気に緩くなった。
先輩はそのまま、扉を開けて行ってしまう。
窓の外は、水族館の鰯の大群のように強烈に染め上げられていた。
建物の淵の闇がゆらりと侵食されていく。



