午前零時、夜に恋をした。

――それから、私の日常は少しずつ、でも確実に変わっていった。

毎日のお昼休み、ノートを持って屋上へ行くこと
そこで夜凪くんと、サイダー味のキャンディーを舐めながら、
たわいもない話をすること

クラスのみんなには内緒の、2人だけの特別な時間
でも、学校にいる間だけじゃ、何かが足りない

そう思うようになったのは、ある日の放課後、
屋上で夜凪くんからスマホを突きつけられたのがきっかけだった

「おい、千歳飴。これ、入れろ」

画面に表示されていたのは、連絡先交換のQRコード
『え……、いいの?』と驚く私に、
彼は『ノートのことで、なんか連絡あるかもしれないだろ』
と、耳を少し赤くしながらぶっきらぼうに言った

そうして繋がった、彼のアカウント。トーク画面の「夜凪 漣」という文字を見るだけで、
胸の奥がキュンと引き締まる

――そして、その日の夜。

「天音、もう遅いから寝なさいよー」

「はーい、おやすみ」

リビングから聞こえるお母さんの声に返事をして、私は部屋の電気を消した
ベッドに潜り込み、スマホの画面を見つめる

時計の針は、あと少しでてっぺんを指そうとしていた。11時58分。11時59分。
ピピッ、と画面のデジタル時計が切り替わる


――午前0時00分。

その瞬間、私の手の中で、スマホが「ぶーっ」と短く震えた。

画面にポップアップされたのは、彼からのメッセージ。
『おい、千歳飴。起きてるか』昼間のぶっきらぼうな声が
そのまま聞こえてきそうな短い文字。深夜零時。

世界が静まり返るこの時間に、彼と繋がっている。
それだけで、昼間よりもずっと、心臓の音が大きく響き始めた