午前零時、夜に恋をした。

パラパラとページをめくる夜凪くんの指が、あるページでピタッと止まった
わかりやすいように図を可愛く描いたり、重要ワードをピンクのペンで囲ったりしたページだ

「なぁ、千歳飴」

「な、なに?」

彼はノートから顔を上げると、ニヤッと意地悪そうに笑った

「お前の字、なんか丸っこくて小さくて、まじで飴玉みたいだな」

「もうっ! 誰の字が飴玉よ! せっかく綺麗に書いたのに!」

私が怒ってノートを取り返そうとすると、夜凪くんは腕を高く上げてそれをひょいっとかわした
男の子との体格の差を急に突きつけられて、顔がカッと熱くなる

「っ、返しなさいよ!」

「やだね。これ、俺のだろ?」

そう言って、彼はノートを自分のカバンにサッと押し込んだ
そして、口に咥えていたキャンディーの棒を指でつまみ、ふっと真面目な顔になる

「……ありがとな。大事に読むわ」

――あ、またその顔。


ぶっきらぼうだけど、すごくストレートに届く彼の「ありがとう」
ずるい。そんな顔されたら、怒るに怒れなくなっちゃうじゃん。

「……どういたしまして。ちゃんと勉強してよね?」

私が照れ隠しにそっぽを向くと、夜凪くんはコンクリートの床をポンポンと叩いた

「ほら、そこ座れよ。お前、弁当まだだろ」

「え、ここで食べるの?」

「おう。一匹狼の特等席、分けてやるから」

自分で『一匹狼』って言っちゃうところが面白くて、私は思わずくすっと笑ってしまった。
冬の風は冷たいはずなのに、彼の隣に座ると、なぜか不思議とあたたかい気がした。