午前零時、夜に恋をした。

手のひらに押し付けられたサイダー味のキャンディーが、
まるで2人の体温みたいに熱く感じられる

いつもの一匹狼のクールさはどこへやら、完全にタジタジになっている彼の姿が愛おしくて、
私は恥ずかしさを忘れて小さくクスッと笑ってしまった

「……何笑ってんだよ、千歳飴」

「ううん、漣くんが思ったより照れてるなーって思って」

「名前……呼べって言ったの、俺だけどさ……」

漣くんが指の隙間から、恨めしそうに、でも愛おしそうに私を睨みつけてくる
その瞳に吸い込まれそうになって、また2人の間に甘い沈黙が流れかけた、その時だった

ガチャリ、と屋上へと続く階段の下の方から、重い鉄の扉が閉まるような音が響いた

トツ、トツ、トツ……。

「っ!?」

誰かの足音が、ゆっくりとこの屋上に向かって階段を上ってきている
私と漣くんは、弾かれたように同時に立ち上がった

一瞬でクラス中がざわついていた朝の空気が脳裏をよぎる
もし、今ここで私たちが2人きりでいるところを誰かに見られたら、絶対に大騒ぎになる

学校一の不良と、まじめな私が屋上でランチなんて、言い訳が立たない

「やばい、誰か来る……っ!」

パニックになりかける私の手を、漣くんの大きな手がガシッと力強く掴んだ
彼の傷だらけの手のひらの温かさが、全身に伝わってくる

「こっちだ。声出すなよ」

低い声でそう囁くと、漣くんは私の手を引いて、屋上の隅にある大きな貯水タンクの陰へと滑り込んだ

ギリギリ大人が2人隠れられるくらいの狭いスペース
漣くんの背中がタンクの壁に当たり、私はその彼の胸の中にすっぽりと収まるような形になってしまった

遠ざかるどころか、昼間よりも、深夜のメールの時よりも、2人の物理的な距離がゼロになる
ガチャリ、と屋上の扉が開く音が聞こえた誰かが入ってきたのだ

でも、今の私には、その誰かの足音よりも、目の前にある漣くんの胸の奥から響いてくる、
ドクドクドクという激しい心臓の音の方が、何倍も大きく耳に届いていた