午前零時、夜に恋をした。

キーンコーンカーンコーン……

4時間目
のチャイムが鳴ると同時に、
私はひまりに「図書室に用事があるの!」と言い訳をして、

昨日よりもさらにハイスピードで階段を駆け上がった
早く会いたい。

学校での遠い距離を、あの屋上で早く埋めたかった
バタン、と勢いよく鉄の扉を開ける。

「はぁ、はぁ……っ、夜凪くん!」

いつものフェンスの前に立っていた彼は、息を切らす私を見て、
少し呆れたように笑った

「おいおい、そんなに急がなくても、俺はいなくなんねぇよ」

「だって……早く、来たかったんだもん」

自分の口から出た言葉のストレートさに、言った本人が一番赤くなる

夜凪くんも予想外の言葉だったのか、一瞬だけ目を見開いたあと、
バツが悪そうにそっぽを向いて頭をかいた

「……ふーん。まぁ、座れよ」

私たちはいつものように冷たいコンクリートの上に並んで座った
お弁当を開けて、他愛もない今日の授業の話をする

学校にいる時よりも、何倍も優しくて柔らかい彼の声
ご飯を食べ終えた頃、夜凪くんがいつものようにポケットを探って、
サイダー味のキャンディーを取り出した

でも、今日はそれを私に渡すんじゃなく、自分の口に咥えようとする

「あ、それ……」

私が物欲しそうに見つめてしまったからだろうか
夜凪くんはキャンディーを口に入れる直前で止めると、私の顔をじっと見つめてきた

「……これ、欲しい?」

「うん、だってそれ、すっごく美味しいんだもん」

私が素直に頷くと、彼はふっと意地悪な、でもどこか熱を帯びた瞳で微笑んだ

「じゃあさ…今だけでいいから。……俺の名前、呼んでみろよ。呼んだら、これやる」

「えっ……!?」

顔が、さっきまで浴びていた冬の冷たい風を忘れるくらい熱くなる
誰もいない屋上。

目の前には、私だけに優しい顔を向けている一匹狼。

私は手の中のお弁当箱をぎゅっと握りしめて、震える声を絞り出した

「……れ、漣くん」

瞬間、彼が息を飲む音が聞こえた。
目の前の彼の顔が、耳どころか頬まで真っ赤に染まっていくのが分かる

「……っ、お前、まじで反則」

彼は片手で顔を覆いながら、もう片方の手で、
サイダー味のキャンディーを私の手のひらに乱暴に押し付けてきた

その不器用で、でも心臓が張り裂けそうなくらい甘い彼の態度に、
私の恋心は、もう引き返せないところまで加速していた。