放課後はひまりの「じっくり聞くからね!」という攻撃を、
「塾の宿題がヤバい!」という強引な言い訳でなんとか切り抜けて、
私は逃げるように家に帰ってきた
「ただいまー……」
玄関でローファーを脱ぎ、リビングに入ると、
ソファでスマホをいじっていたお兄ちゃんの瀬那がひょいと顔を上げた
「おかえり、天音。なんか今日、やけに帰ってくるの早かったな」
「あ、うん。ちょっと急いでたから……」
「ふーん?」
瀬那は目を細めて、じっと私の顔を見てくる
その視線がなんだか見透かされているようで、私は慌ててカバンを抱きしめた
「な、なに? 私の顔に何か付いてる?」
「いや? なんかお前、今日ずっとニヤニヤしてるなと思って。学校でいいことでもあったのか?」
「えっ!? ニニ、ニヤニヤなんてしてないよ!」
バレた、と思って声が裏返ってしまう。
お母さんたちなら誤魔化せても、歳の近いお兄ちゃんは
こういう変化にすごく鋭いから本当に油断できない
「怪しいねぇ。あ、まさか好きな奴でもできた?」
「なっ、何言ってるの!? そんなわけないじゃん! もう、部屋で宿題してくる!」
瀬那の「図星だろー?」というからかうような笑い声を背中で聞きながら、
私はドタドタと階段を上って自分の部屋に駆け込み、ベッドに倒れ込んだ
――好きな人
頭の中に浮かぶのは、風になびく前髪、傷だらけの手、
そして屋上で私を真っ直ぐ見つめて「待ってるから」と言った、夜凪くんのあの顔
「……っ、もう、バカ!」
私は枕に顔を押し付けて、手足をバタバタさせた
ただのノートを渡す関係なのに、
どうしてこんなに彼のことで頭がいっぱいになっちゃうんだろう
急いで夕ご飯とお風呂を済ませて、部屋の電気を消したのは、
夜の11時45分のことだった。
ベッドの中で、スマホをぎゅっと握りしめる
画面の光が、暗い部屋をうっすらと照らしていた
――あと、15分
心臓の音が、昼間走ったときみたいに激しく脈打ち始める
夜凪くんは、今何をしてるのかな
本当に、私との約束を覚えててくれているのかな
11時58分。
11時59分。
そして、スマートフォンのデジタル時計の数字が、静かに切り替わった。
――午前0時00分。
その瞬間、待ち焦がれていた手の中の機械が、
まるでお互いの心音みたいに、強く激しく震えだした。
「塾の宿題がヤバい!」という強引な言い訳でなんとか切り抜けて、
私は逃げるように家に帰ってきた
「ただいまー……」
玄関でローファーを脱ぎ、リビングに入ると、
ソファでスマホをいじっていたお兄ちゃんの瀬那がひょいと顔を上げた
「おかえり、天音。なんか今日、やけに帰ってくるの早かったな」
「あ、うん。ちょっと急いでたから……」
「ふーん?」
瀬那は目を細めて、じっと私の顔を見てくる
その視線がなんだか見透かされているようで、私は慌ててカバンを抱きしめた
「な、なに? 私の顔に何か付いてる?」
「いや? なんかお前、今日ずっとニヤニヤしてるなと思って。学校でいいことでもあったのか?」
「えっ!? ニニ、ニヤニヤなんてしてないよ!」
バレた、と思って声が裏返ってしまう。
お母さんたちなら誤魔化せても、歳の近いお兄ちゃんは
こういう変化にすごく鋭いから本当に油断できない
「怪しいねぇ。あ、まさか好きな奴でもできた?」
「なっ、何言ってるの!? そんなわけないじゃん! もう、部屋で宿題してくる!」
瀬那の「図星だろー?」というからかうような笑い声を背中で聞きながら、
私はドタドタと階段を上って自分の部屋に駆け込み、ベッドに倒れ込んだ
――好きな人
頭の中に浮かぶのは、風になびく前髪、傷だらけの手、
そして屋上で私を真っ直ぐ見つめて「待ってるから」と言った、夜凪くんのあの顔
「……っ、もう、バカ!」
私は枕に顔を押し付けて、手足をバタバタさせた
ただのノートを渡す関係なのに、
どうしてこんなに彼のことで頭がいっぱいになっちゃうんだろう
急いで夕ご飯とお風呂を済ませて、部屋の電気を消したのは、
夜の11時45分のことだった。
ベッドの中で、スマホをぎゅっと握りしめる
画面の光が、暗い部屋をうっすらと照らしていた
――あと、15分
心臓の音が、昼間走ったときみたいに激しく脈打ち始める
夜凪くんは、今何をしてるのかな
本当に、私との約束を覚えててくれているのかな
11時58分。
11時59分。
そして、スマートフォンのデジタル時計の数字が、静かに切り替わった。
――午前0時00分。
その瞬間、待ち焦がれていた手の中の機械が、
まるでお互いの心音みたいに、強く激しく震えだした。
