記憶が戻るまで

「悪い。人とぶつかりそうだったから──」「愛?」


二の腕に力を込めた手を離し顔を覗き込む流沙。



「しっ失礼しますわ!」後ろを振り返り、顔面を



両手で覆う。肩を掴まれ引き寄せられる──


「危ない。こっち行こ。早く」


顔を隠す理由も聞かずに肩を抱かれ映画館の中へ。


人差し指と中指の隙間からみると広々として



人があんまりいない。「ねぇ。なんなのそのポーズ。



慣れて欲しいっつってんのに」顔を指の隙間からみる。



哀愁漂う顔。『まもなく上映開始──』パッと顔から



両手を離す。反射的に。「やっと顔見れた」にこっと



万倍の笑顔を返される。耳まで真っ赤になる。「映画



始まるみたいだし、見に行こうか──」手を繋がれる。



恋人繋ぎ。心拍数上がったり下がったりの連続ですの


…!席に着き背もたれにもたれる。手は繋いだまま。



やっと間に合ったと思ったら恋愛物だということを


思い出し余計隣の流沙に意識してしまうのでは──!?



と思ったけどノーマルな感じから始まったので、あまり



意識することはなかった。見ていくうちに記憶が断片



的に戻りつつある。自販機…?それだけで映画は終わっ


た。途中からドキドキしだしたりしたけど、無事に終わ


った。私の手は繋がれたまま。外に行くと雨が降って


いたのでプレゼントした折りたたみ傘で相合傘して


帰ることになった。