君に届け

震災から数日が経った。
自衛隊や警察による懸命な捜索が続けられる中、街の悲惨な様子が少しずつ分かり始めていた。
だけど、私の家族の行方はまだ何一つ分からないままだった。

そんなある日の午後、避難所の入り口に、見つかった人たちの名前が書かれた名簿が貼り出された。
人だかりをかき分けて、私は震える指でその紙をなぞる。
心臓が破裂しそうなほど、ドクドクと激しく鳴っていた。

「……あ」

見つけてしまった。
そこには、見間違えるはずのない、大好きな人たちの名前が並んでいた。

『相原 健一(42)』
『相原 美佐子(38)』
『相原 徳次郎(70)』
『相原 清子(68)』
そして――『長谷川 優子(13)』

全員の名前の横に、冷酷な事実が添えられていた。
家族も、大親友の優子も、みんなあの津波に巻き込まれ、冷たくなって見つかったのだと。
全員が、もう帰らぬ人となってしまったのだ。

頭の中が真っ白になった。
耳の奥で、キーンという高い音が鳴り響く。
大切な人たち全員の死を告げる、あまりにも残酷な訃報。
頭の中に、今朝の光景が、みんなの笑顔が、走馬灯のように溢れてきて胸をかきむしりたくなる。

毎朝、笑顔で優しく迎えてくれたおじいちゃんとおばあちゃん。
「お父さんはもう出るぞ」って、いつも通り仕事に向かったお父さん。
「暖かくしていくのよ」って、私にお気に入りのマフラーを巻いてくれたお母さんの、あの手の温もり。

あんなに温かかったみんなが、今はもう、冷たい遺体になってどこかに横たわっている。
家と一緒に、みんなの命も、あの黒い水の中にドロドロに溶けて消えちゃったんだ。

「なんで……なんで私だけ生き残っちゃったんだろう……!」

涙がボロボロと溢れて、床にポタポタとシミを作っていく。
もしあの時、お家にいれば、みんなと一緒にいられたのかな。
優子に手を強く振り払われたとき、置いていかずに一緒に死ねていればよかったのかな。

「みんなが死んじゃうなら……私も一緒に、あの時死ねばよかった……!!」

激しい後悔と絶望が、私の心をズタズタに引き裂していく。
家族も、家も、親友も、一瞬ですべてを奪われた私は、ただ声を上げて泣きじゃくることしかできなかった。