街中に設置された防災スピーカーから、空気を切り裂くような凄まじい音が鳴り響いた。
――ウーーー、ウーーー、ウーーー
3秒鳴って2秒休む、聞いたこともない不気味で重いサイレンの音。
大津波警報の合図だ。
『大津波警報が発表されました! 直ちに高台へ避難してください!』
スピーカーからの緊迫したアナウンスと同時に、遠くから「ゴーーー……」という、地を幾重にも這うような海の咆哮が迫ってくるのが分かった。
「津波が来るぞ! 高台へ走れ! 立ち止まるな!!」
「逃げて!!早く!!」
「ばぁば早く!!死ぬぞ!!」
「ママぁぁあ!!!こわいよぉぉお!!」
周囲を走る人達の悲鳴が響き渡る。
私は涙で視界をぐしゃぐしゃにしながら、優子の冷たくなり始めた手をぎゅっと強く握りしめた。
絶対に離さない、そう誓うように。
でも、優子は苦しそうに息を吐きながら、私の目をまっすぐ見つめてきた。
「希子……っ、先に行って……!」
「何言ってるの!? 優子を置いていけるわけないじゃん! 一緒に逃げるの!」
「お願いだから、走って……! このままだと、二人とも死んじゃう……っ!」
優子の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「希子は、生きて……! 先に行って、お願いだから!!」
優子は最後の力を振り絞って、私が握っていたその手を、強く、激しく振り払った。
「あ……」
離れてしまった手のひらに、優子の冷たい涙だけが残る。
ゴーーー……という地を這うような不気味な水の音が、もうすぐそこまで迫っていた。
私は激しい恐怖に突き動かされるように、優子を残して一人で走り出してしまった。
夢中で、近くの山へ続く坂道を駆け上がる。
足がもつれて何度も転びながら、ただ上へ、上へと這い上がった。
なんとか山の上にたどり着き、息を切らして振り返った瞬間。
私の目に飛び込んできたのは、地獄のような光景だった。
「いやあああああ!」
「逃げて! 早く上に上がって!!」
「もう…終わりだ…」
周囲に逃げてきた人たちの、狂ったような悲鳴が響き渡る。
街の向こうから、黒い巨大な水の壁が、あらゆるものを一瞬で飲み込みながら押し寄せてきていた。
バリバリバリ、ドシャーーーン!!凄まじい破壊音を立てて、私の大好きな街が、見慣れた景色が、一瞬で黒い水に飲み込まれていく。
そして、その中に、私の家があった。
お母さんが「暖かくしていくのよ」と笑ってくれた、お父さんが「行ってらっしゃい」と言ってくれた、
大切な我が家。
その家が、津波の凄まじい力によって、一瞬でミシミシと音を立てて崩れていくのが見えた。
「うそ……お父さん……お母さん……っ」
悲鳴をあげることさえできなかった。
あまりの衝撃に、私はただ唖然としたまま、大切なものすべてを飲み込んでいく黒い波を、ただ見つめることしかできなかった。
――ウーーー、ウーーー、ウーーー
3秒鳴って2秒休む、聞いたこともない不気味で重いサイレンの音。
大津波警報の合図だ。
『大津波警報が発表されました! 直ちに高台へ避難してください!』
スピーカーからの緊迫したアナウンスと同時に、遠くから「ゴーーー……」という、地を幾重にも這うような海の咆哮が迫ってくるのが分かった。
「津波が来るぞ! 高台へ走れ! 立ち止まるな!!」
「逃げて!!早く!!」
「ばぁば早く!!死ぬぞ!!」
「ママぁぁあ!!!こわいよぉぉお!!」
周囲を走る人達の悲鳴が響き渡る。
私は涙で視界をぐしゃぐしゃにしながら、優子の冷たくなり始めた手をぎゅっと強く握りしめた。
絶対に離さない、そう誓うように。
でも、優子は苦しそうに息を吐きながら、私の目をまっすぐ見つめてきた。
「希子……っ、先に行って……!」
「何言ってるの!? 優子を置いていけるわけないじゃん! 一緒に逃げるの!」
「お願いだから、走って……! このままだと、二人とも死んじゃう……っ!」
優子の目から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちる。
「希子は、生きて……! 先に行って、お願いだから!!」
優子は最後の力を振り絞って、私が握っていたその手を、強く、激しく振り払った。
「あ……」
離れてしまった手のひらに、優子の冷たい涙だけが残る。
ゴーーー……という地を這うような不気味な水の音が、もうすぐそこまで迫っていた。
私は激しい恐怖に突き動かされるように、優子を残して一人で走り出してしまった。
夢中で、近くの山へ続く坂道を駆け上がる。
足がもつれて何度も転びながら、ただ上へ、上へと這い上がった。
なんとか山の上にたどり着き、息を切らして振り返った瞬間。
私の目に飛び込んできたのは、地獄のような光景だった。
「いやあああああ!」
「逃げて! 早く上に上がって!!」
「もう…終わりだ…」
周囲に逃げてきた人たちの、狂ったような悲鳴が響き渡る。
街の向こうから、黒い巨大な水の壁が、あらゆるものを一瞬で飲み込みながら押し寄せてきていた。
バリバリバリ、ドシャーーーン!!凄まじい破壊音を立てて、私の大好きな街が、見慣れた景色が、一瞬で黒い水に飲み込まれていく。
そして、その中に、私の家があった。
お母さんが「暖かくしていくのよ」と笑ってくれた、お父さんが「行ってらっしゃい」と言ってくれた、
大切な我が家。
その家が、津波の凄まじい力によって、一瞬でミシミシと音を立てて崩れていくのが見えた。
「うそ……お父さん……お母さん……っ」
悲鳴をあげることさえできなかった。
あまりの衝撃に、私はただ唖然としたまま、大切なものすべてを飲み込んでいく黒い波を、ただ見つめることしかできなかった。
