おかえりが聞こえる病室

自動ドアが開く。

「お願いします。」

救急隊員の声に応えるように、救急外来のスタッフが集まる。

「5歳女児です。」

「呼吸苦あり。発熱38.2℃。」

「吸入後も改善が乏しく搬送しています。」

医師が亜美の顔をのぞき込む。

「こんばんは。」

「先生だよ。」

「ちょっと診せてね。」

優しい声だった。

胸に聴診器が当てられる。

「ゆっくり息を吸ってみようか。」

亜美は頷こうとする。

けれど、思うように息が吸えない。

「……っ。」

小さく咳き込んだ。

医師は静かに頷き、看護師へ視線を向ける。

「酸素を続けましょう。」

「採血もお願いします。」

その言葉を聞いた瞬間。

亜美の肩がぴくっと震えた。

採血。

その二文字だけは聞き逃さなかった。

ママもその表情に気づく。

「亜美。」

「大丈夫だから。」

亜美は小さく首を振る。

「……やだ。」

声はほとんど聞こえないくらい小さかった。

看護師はストレッチャーの横にしゃがみ、亜美と目線を合わせる。

「びっくりしたね。」

「今から血液を少しだけ調べさせてね。」

「どうしてお熱が出ているのか、お薬が効いているかを知るために必要なんだ。」

亜美は涙をこらえながら聞いている。

「終わったらちゃんと教えるね。」

その言葉に、小さく頷いた。

怖さは消えない。

それでも、説明してもらえるだけで、ほんの少しだけ心の準備ができた。