おかえりが聞こえる病室

病室を出た莉奈は、ナースステーションへ戻る。

カルテを開く。

でも、ペンが止まった。

(本当は。)

(私だって、痛い思いなんてさせたくない。)

その時だった。ベテラン看護師が隣へ来る。

「莉奈。」

「はい。」

「つらそう?」

「……はい。」

ベテランは静かに笑った。

「それでいいの。」

「痛い検査を平気で勧められるようになったら、看護師として少し危ない。」

莉奈は顔を上げる。

「でも。」

「必要な検査から逃げないよう支えるのも、私たちの仕事。」

「その葛藤を忘れないで。」

莉奈はゆっくりとうなずいた。

「はい。」

その返事は、小さいけれどまっすぐだった。