おかえりが聞こえる病室

病室を出た莉奈は、その会話を知らない。

ナースステーションでカルテを書きながら、ふと302号室を見る。

(“また来ますね”って言ったら、少し笑ってくれた。)

その小さな変化が、なんだか嬉しかった。

でも莉奈もまだ知らない。

この小さな約束を、亜美がこれから何度も信じるようになることを。

そして、302号室に帰るたびに——

「莉奈さん、来てくれる?」

そう聞くようになることを。