おかえりが聞こえる病室

病室を出ようとした莉奈は、ふと振り返った。

「そうだ。」

「朝ごはん、ゼリーがついてるかもしれないよ。」

亜美が少しだけ目を丸くする。

「ゼリー?」

「うん。」

「もしあったら、教えてね。」

そう言って、小さく笑った。

その笑顔につられるように、亜美もほんの少しだけ笑う。

本当に少しだけ。

でも、昨日の夜には見られなかった笑顔だった。

朝日は302号室の窓から静かに差し込み続ける。

昨日は「帰りたい」と泣いていた小さな女の子。

その病室に、ほんの少しだけ笑顔が咲いた朝だった。