おかえりが聞こえる病室

ベッドサイドには、赤いナースコールのボタン。

さっき莉奈が言っていた。

「困ったら押していいからね。」

亜美はボタンを見つめる。

(こんなので押していいのかな。)

(眠れないだけなのに。)

小さな指がボタンに近づく。

でも、途中で止まった。

「やっぱり……。」

ママはその様子を見ていた。

「押してみる?」

亜美は慌てて首を振る。

「だめ。」

「いそがしいもん。」

ママは優しく微笑んだ。

「さっき看護師さん、何て言ってた?」

亜美は思い出す。

『眠れなくなったら押してね。』

『遠慮しなくていい。』

その声が頭の中でよみがえった。