おかえりが聞こえる病室

午前2時13分。

302号室は静まり返っていた。

病室の照明は足元だけを照らす常夜灯に変わり、窓の外には夜景だけが広がっている。

亜美は眠ろうと何度も目を閉じた。

けれど、そのたびに目が覚める。

廊下を歩く足音。

遠くで鳴るナースコール。

点滴ポンプの電子音。

全部が家とは違う。

(眠れない……。)

布団の中で、小さく寝返りを打つ。

その音に気づいたママが声をかけた。

「まだ眠れない?」

「……うん。」

「苦しい?」

亜美は少し考えて首を横に振る。

「くるしくない。」

「でも……。」

言葉が続かない。

胸の奥が、なんとなく苦しい。

寂しい。

怖い。

でも、それを何て言えばいいのか分からなかった。