おかえりが聞こえる病室

午後9時40分。

布団に入って一時間。

家の中は静まり返っていた。

突然、小さな咳が聞こえる。

「コン……コンッ。」

続けてもう一回。

「ゴホッ……。」

寝室へ向かうと、亜美は上半身を少し起こして座っていた。

「どうした?」

「ねむれない。」

ママはおでこに手を当てる。

少し熱い。

体温計を取りに行き、測ってみる。

37.8℃。

「お熱出てきたね。」

亜美は何も言わず、小さく頷いた。

「もう一回吸入しよう。」

「……うん。」

二回目の吸入。

終わったあとも、亜美は布団に横になることができなかった。

横になると咳が続く。

少し起き上がっている方が楽だった。

ママはその背中をゆっくりさする。

「大丈夫。」

「もう少し様子見よう。」

そう言った自分の声が、少しだけ震えていることに気づいていた。