魔女の弟子のまあまあ楽しい2度目の人生

晩餐会の翌日、リーナ達は王城と魔女の森を繋ぐ移動魔術で小屋を訪れた。

リーナはウィルとの婚約が決まってからは目まぐるしいスケジュールで森を訪れる時間が取れなかったし、それ以前も母に見つかり森へ行くことを禁止されていたので、かれこれ半年ぶりの訪れだった。

「ここに来るとホッとするわ・・・」
小屋の前で笑顔になったリーナを見てウィルも頷いた。
「そうだな。俺もだ。」

リーナとウィルの後ろにはローランドとケイオスそしてギリアンが続いた。
このメンバーになったのは、魔術移動が出来る人数に限りがあったのと、ケイオスとギリアンがいれば滅多なことは起こらないとローランドが言ったためだ。

「こちらが先生のお墓です。」
小屋の横手に周り、リーナはマリーンのお墓を指し示した。
ケイオスはヨロヨロと墓に近づき跪いた。
「ああ、マリーン。君は私の生きる源で私の命だったのに・・・。何も言わずに逝ってしまうなんて、相変わらずひどい女だ。」
そう言って手にしていた花束をお墓に供えた。
俯く彼の目頭は少し濡れているようだった。

リーナ達は何も言えず静かにその姿を見守っていたが、やがて彼は立ち上がり無言でリーナ達に向きなおった。

ええっと・・・、何か声をかけた方がいいのかしら?
いや、こんな時は余計なことは言わない方がいいような気がする。

リーナはグルグルと思考を巡らせた。
「あの、ちなみにですね。隣が私のお墓です。よろしければそちらも是非お参りしていただければ嬉しいです。」
「はっ?」
ケイオスは一瞬呆けた表情を浮かべた後、マリーンの墓のすぐ横にある墓標を見た。

『魔女の弟子 リーナ・ケーレス ここに眠る』

「お墓はウィルが作ってくれたんです。墓標は生前私が自分で作りましたが、素材とか字体とかは先生の物とお揃いにしてみました。仲が良さそうな感じでいいでしょう?」
リーナが自慢げにそう言うとケイオスがプッと噴き出した。
「アハハ。お前は面白いな。なんだかしんみりした気分が吹き飛んでしまったぞ。」

良かった。
ちょっと自虐ネタだったけど、雰囲気を変えれたようね。

リーナはホッと息をついた。
「それにしても、あなたのお墓を目の当たりにすると、昨日の話が改めて本当なのだと実感して畏敬の念すら感じますね。」
ローランドがリーナの墓を見つめながら感慨深そうにつぶやいた。

「あなたのお墓はレオンハルト陛下が作られたんですか?」
「ええ。当時はまだ小さな子供だったのに、本当に感謝しています。」
「昨日もお願いしましたが、お二人の出会いについて是非お聞きしたいですね。」

「小屋の中で話しましょう。前世のリーナと私が一緒に暮らしていた家です。」
ウィルの言葉にケイオスが噛みついた。
「マリーンの家だろう。」
「ええ、ウィルと住む前は先生と私の家でしたね。さあさ、皆さん早く入りましょう。」
険悪な空気を察知して、リーナは慌てて小屋の扉を開けたのだった。