あなたのほくろには、沼りません!


 短い間に忙しく気持ちは揺れ動いていたが、日頃の鍛錬の賜物で、崇人には澄花の心の乱れを気づかなかったようだ。
 「花粉が目にきているなら、駅ナカの眼科がおすすめですよ。内服薬や点鼻薬も処方してもらえますし」
 崇人との会話を終わらせるように、早口で喋り終えた澄花は、これ以上話しかけられないように、タブレットを操作していく。
 先輩に対して失礼な態度とは重々承知だが、幸いにも崇人は気にしていない様子だ。
 「いい病院を教えてくれて、ありがとう。仕事終わりに早速、行ってみる」

 崇人はもう一度目元を拭うと、伊達と言っていたメガネをかける。一瞬でほくろが目立たなくなった。
 見慣れた姿に、澄花はホッと息を吐いた。緊張の糸もスルスルと解けていく。少しだけ表情が柔らかくなった澄花の雰囲気を察した崇人は、ドカンと爆弾を投下した。
 「高梨さんのツボはどっち? メガネ? それともほくろ?」
 バレてる。一瞬で澄花の顔が赤くなった。恥ずかしさなのか、それとも自分のフェチを無遠慮に指摘された怒りなのか、澄花自身も分かっていない。ただ、口をパクパクしながら小刻みに手を震わせているだけ。