あなたのほくろには、沼りません!


「さすがに性癖と言われると、インパクトありすぎて忘れられないです」
「そんな……」
 愕然とする澄花に崇人は、じゃあと、提案する。
「俺の性癖も教えてあげるよ」
 
 そう言うなり、崇人は澄花の覆いかぶさって、口を塞いだ。
「!?」
 突然の崇人の行動に、澄花は目を白黒させた。

 崇人は、戸惑う澄花に構わず、更に深いキスをする。
「んっ……」
 澄花の喉から音が漏れる。その声を聞いた崇人は、ようやく唇を離した。

「な……んで?」
 澄花のハスキーな声が、更に掠れる。
 その声に満足したように崇人は笑った。

「これが俺の性癖」
「え……?」
 キスすることが? 混乱している澄花の様子を見た崇人は、いたずらっぽい笑みを浮かべた。
「違う違う。声の方」
「声……?」
「そっ、声。俺さ、ハスキーな声が好きなんだ。もっというと、ハスキーな声が俺の行動で甘い響きになるのが」
「なっ……」
「だから、ずっと前から。それこそチーム組む前から、高梨さんの声は、俺のどストライク」
 絶句する澄花を置いて、崇人は助手席のドアを開けた。
「ありがとうございます。運転してくれて」
 まだ呆然としている澄花を置いて、さっさと車を降りる。
 ドアを閉めようとして、何か思い出したかのように崇人は身をかがめた。

「俺、社内恋愛はしない主義だけど、社内結婚は容認派だから。じゃ」

 バタンと音を立てて、車のドアが閉められた。

 車内に残された澄花は、左右を見渡して誰もいないことを確認すると、ハンドルに顔を伏せた。

「え? な、なに? なにが起きた……?」

 混乱しきっている澄花の問いに答える人物は、既に社内に戻っていたのだった。