この溺愛、誰か止めて下さい!

「…幸人?」


「せいちゃん、おかえり」


あたしの姿を見つけると安心したように笑顔で改札口の外からこちらに向かって手を振って来ていた。


慌てて改札から外に出る。


「おかえりって…何してんのこんなところで」


「何って、駅で待ってるって連絡したよ?」


「確かに来てたけど、1時間も前に送ってたじゃん。もう21時だよ?」


まさかこんな時間まで待ってるとは思わないじゃん。


「逆にもう21時だよ?そんな時間にせいちゃん1人で歩いて帰らせるわけないよ」


「……バカ幸人。……ありがとう」


「どーいたしまして」


幸人はくすっと笑ってこっちを見ていたけど、あたしはなんだか気恥ずかしくてそっぽを向いた。


連絡返さなかったの申し訳なかったな。これからは気をつけよ。


それにお腹も空いたなあ。あんまりカラオケで食べ物食べたりできなかったんだよなあ。


「ところでせいちゃん」


あたしが食のことで頭いっぱいにして気づかないうちに、幸人はあたしの少し後ろで立ち止まっていた。


なんかこの感じ今日の朝と一緒だな。

なんて思いながらどーしたの?と幸人の顔を覗き込む。


一瞬目があってしばらく顔を見つめられたけど、すぐに口を開いたのは幸人からだった。



「今日本当に姫島さんと2人でカラオケ行ってたの?」


「何急に。ほ、本当だよ!」


早く帰ろと言わんばかりに、幸人の手を引いて自宅に向かう。
手を引いている間幸人は何も言わなかったけど、
駅から家はそんなに離れていないので、気づくと家の前に着いていた。


相変わらず何も話さない幸人の手をはなす。



「じゃあ、また明日ね幸人」



なんだか少し変な空気になってしまったので、逃げるように家の入ろうとした時だった。



話したはずの手がもう一度幸人によって繋がれる。



あたしは家の中に入ることは叶わなくて、逆に幸人の家の中に引っ張られるようにして連れて行かれた。


目の前には幸人が、背中は壁。


完全に逃げ場を無くしてしまった。


幸人の家族はママもパパも病院勤め。 


この静かさはきっと夜勤なのだろう。家に誰もいないことがすぐにわかった。



沈黙の時間が流れる。
その沈黙を先に破ったのは幸人だった。