花囲い


 放課後、担任に呼ばれた。職員室ではなく、ソファがあるだけの小さな相談室だった。なぜか麦茶まで用意されている。

「佐藤」

 担任は穏やかだった。

「最近、本当に辛そうだ」

 カラン、と麦茶のグラスの中で氷が鳴る。

「どうだろう。スクールカウンセラーと一度話してみないか」

 私は引きつる口元を無理やり動かす。

「先生も」
「うん?」
「私がおかしいって思ってるんですか。」

 先生はすぐには答えなかった。

「おかしい、じゃない」
「じゃあなんですか」
「疲れているんだ」

 同じだった。言い方が違うだけで。結論は統一されている。

「失礼します」
「佐藤」

 部屋を出る私の背中に担任の言葉が突き刺さる。

「井𡈽も、お前のことを本当に心配しているんだぞ」

 私は振り返らなかった。