花囲い

 ♢

 気分が悪いまま迎えた翌朝。教室に入ると、美咲が私を見るなり笑顔で手を振った。

「聞いたよ!」
「何を?」
「井𡈽くん、この前あんたのお母さんに会ったんだって?」

 心臓が、ゆっくりと沈んでいく。

「もう家族公認じゃん」

 教室中に笑い声が広がる。その輪の中で、井𡈽くんは困ったように笑っていた。

「軽くあいさつしただけだよ」

 否定もしない。肯定もしない。その曖昧な笑顔だけが、私の逃げ道を一つずつ塞いでいくように思えた。