「譲れない、彼女。」

卒業まで、
あと二週間。

授業も、
残りわずかになった。

今日は、
沙和たち一組と
俺たち二組の合同体育。

男女に分かれて、
サッカーをしている。

沙和も、
笑いながら
慣れないサッカーボールを蹴っていた。

その姿を、
つい目で追ってしまう。

「おいっ、倫也。
沙和ばっかり見てんなよ」

親友の徹に、
頭をパチンと叩かれた。

「痛っ」

「分かりやすすぎ」

そう言って、
徹は笑う。

俺も、
苦笑いするしかなかった。

今日こそ、
決める。

 

いつもの道を、沙和と帰る。

頭の中は、
一つのことでいっぱい。

でも、
こうして沙和と帰れるのも、
もう数えるほどしかない。

そう思うと、
少し寂しくなった。

俺が沙和を見ると、

沙和も
俺を見ていた。

「どうした?」

そう聞くと、

「今日さ、家に寄る?」

「えっ。家!?」

「ママが、
ケーキ食べていきなって。
私、そんなにケーキ得意じゃないし」

「えっ、沙和、甘い物苦手なの?」

「少しね」

そう言って笑う。

「食べるのは構わないけど……
家に行くんでしょ」

「そうだけど。……嫌?」

「嫌とかじゃなくて。
彼氏が家に行くってことだし。
なんか、
誰もいないときに上がるのもなって」

すると沙和は、
不思議そうな顔をした。

「倫也。普通に、
お母さん家にいるけど」

「えっ?」

「お母さんね。
倫也に会いたいんだって」

そう言って、
沙和はいたずらっぽく笑った。

「よろしく」



「お邪魔します」

思っていたのと
違う展開に、ちょっと焦っている。

家に行くなら、
もしかして……。

なんて思っていた俺は、甘かった。

「加藤倫也です。
よろしくお願いします」

何を言えばいいのか分からず、

とりあえず、
沙和のお母さんにあいさつした。

「いらっしゃい。どうぞ」

テーブルには、
マロンケーキが並べられた。

……全然、
味が入ってこない。

何となく、視線も感じる。

そっと沙和を見ると、

笑ってる。

俺を見て、
楽しそうに笑ってる。

何だよ、まったく。

「倫也さ。食べ終わったら、
見せたいものがあるから。

あとで、私の部屋に行こ」

「へぇ?」

思わず、
変な声が出てしまった。

俺は慌てて
平静を装う。

「……分かった」

そう答えると、

緊張をごまかすように、
マロンケーキを
大きくほおばった。