ゆっくり紡ぐ、愛の言葉

翌朝、日差しが窓を照らし始めた頃、チャイムが鳴った。玄関を開けると、弁護士であり親しい友人でもある健二が立っていた。
「おはよう、健二。わざわざ来てくれてありがとう」
「おはよう。気になっていたから、早めに来たよ」 リビングに通すと、美登里が温かいコーヒーを運んできてテーブルに並べた。三人はソファに腰を下ろし、まずは関ヶ原から受けてきた数々の嫌がらせの経緯、そして今回の知可子に向けられた根も葉もない不倫疑惑の詳細を、時系列に沿って丁寧に話し始めた。健二は真剣な面持ちでメモを取りながら、法的な対処の方向性や証拠の確保について、一つずつ確認していく。
「話はよくわかった。これだけの事実があれば、名誉毀損やストーカー行為としても然るべき措置が取れる。また後日、詳しい資料をまとめて届ける」
そう言って健二は帰っていった。
健二を見送った後、美登里はキッチンに立って家事を始めた。愛斗はリビングのソファに座り、スマートフォンを開いてインスタグラムのライブ配信を見ていた。配信していたのは永井真理子だ。
ふとコメント欄を見ると、関ヶ原と思われるアカウントが次々と書き込みを繰り返しているのが目に入った。「コラボしようよ」「認定してよ」としつこく口説く言葉に続き、だんだんと際どい性的な嫌がらせのコメントまで並び始めた。画面の向こうの真理子は、明らかに声が震え、怯えている様子がうかがえた。
ほどなくして、美登里のスマホに真理子からのメッセージが届いた。「関ヶ原さんがライブでずっと怖いことを言ってくるの……どうしよう」という文字に、美登里はすぐさま返信し、同時にライブのコメント欄にも書き込んだ。「関ヶ原さんは危険な人物です。絶対に応じたり、個別にやり取りしたりしないでください!」
その日の夕方、愛斗と美登里は二人で車を走らせ、真理子を迎えに行った。そのまま一緒にゆめマートへと向かい、夕食の材料や必要な雑貨を買い揃える。続いて店内にあるセリアに立ち寄り、三人でお揃いのヘアピンと扇子を選んで購入した。

「これ、お揃いだね。嬉しいわ」真理子がようやく笑顔を見せると、愛斗と美登里も頷いた。
家に戻ると、三人で串かつを揚げ、テーブルを囲んで串かつパーティーを開いた。揚げたての串かつを頬張りながら、嫌なことは忘れて楽しい話で盛り上がり、心から笑い合う時間が流れていった。


串かつパーティーは和気あいあいと三時間も続き、楽しい話と笑いで時間はあっという間に過ぎていった。そろそろ夜も更けてきたので、真理子を家まで送り届け、二人は自分たちの家へと戻った。

後片付けを済ませ、ほっと一息ついたとき、愛斗が美登里をそっと引き寄せた。柔らかく唇を重ね合わせ、一日の終わりの安らぎを分け合う。それから二人でゆっくりとお風呂に入り、湯船に浸かりながら今日の出来事を振り返り、最後に歯を磨いてからベッドに入り、穏やかな眠りについた。
翌朝、朝日が差し込むと愛斗は目を覚まし、仕事の準備を始めた。身支度を整えると迎えの送迎バスに乗り込み、会社へと到着する。一日の業務に集中して取り組み、昼食を済ませてひと息ついた昼休み、スマートフォンの通知が鳴った。
画面を見ると美登里からのLINEだ。「今から真理子ちゃんとデートしてくるね」というメッセージが届いていた。
愛斗は思わず微笑み、すぐに返信を打ち込んだ。
「そうなんだ、良かったね! 二人ともゆっくり楽しんできて。何かあったらいつでも連絡してね。気をつけて行ってらっしゃい」
そのメッセージを送り終えると、愛斗は穏やかな気持ちで午後の仕事へと向かった。