BLUE YELL ―その声が届くまで―

 美咲先輩は優しく微笑んだ。

「実はね。」

「私、赤ちゃんができたの。」

「え……!」

 驚いたあと、すぐに笑顔になる。

「おめでとうございます!」

「ありがとう。」

 美咲先輩は嬉しそうに笑った。

「しばらく産休に入ることになってね。」

「だから、ディレクターの仕事も一旦お休みするの。」

 私は小さく頷く。

「そこでね。」

 美咲先輩が私をまっすぐ見つめた。

「凪に声をかけようって思った。」

「……私ですか?」

「うん。」

 美咲先輩は迷いなく頷いた。

「もちろん、オーディションはちゃんと受けてもらう。」

「推薦したからって、合格できるわけじゃない。」

「そこは公平。」

 その言葉に、少しだけ安心する。

 もし特別扱いだったら。

 私はきっと、この話を受けられなかった。

「でもね。」

「私は凪なら大丈夫だって思ってる。」

「……どうしてですか?」

 美咲先輩は少しだけ笑って、コーヒーをひと口飲んだ。

「凪って、技術があるからじゃない。」

「え?」

「周りを見られる子だから。」

 思わず言葉を失う。

「競技チアって、一人じゃ何もできないでしょ?」

「誰かを信じて。」

「誰かに支えられて。」

「みんなで一つの演技を作る。」

「凪は、昔からそれができる子だった。」