しばらく他愛もない話をしたあと、私は前から気になっていたことを口にした。
「……ひとつ、聞いてもいいですか?」
「もちろん。」
「私、美咲先輩は卒業しても競技チアを続けるんだって思ってました。」
全国大会で何度も結果を残してきた人だ。
卒業後も、当然どこかの実業団へ進むものだと思っていた。
でも実際は違った。
今、美咲先輩がいるのはプロバスケットボールチーム『東京ノースレイヴンズ』。
当時はチアリーダーとして入ったらしいが、現在はチアディレクターとして、チームをまとめている。
私の問いに、美咲先輩は少しだけ空を見上げた。
「私ね。」
春風が髪を揺らす。
「中学生の頃から、ずっと競技チアをやってきたの。」
「勝つために練習して。」
「誰かと競って。」
「順位を目指して。」
少しだけ笑う。
「もちろん、それが大好きだった。」
でも、と続ける。
「大学を卒業したら一区切りって、ずっと決めてたんだ。」
私は少し驚く。
そんなふうに考えていたなんて、知らなかった。
「次はね。」
美咲先輩が私を見る。
「誰かと競うんじゃなくて。」
一呼吸置いて、優しく笑った。
「誰かを応援するチアリーダーになりたいって思ったの。」


