BLUE YELL ―その声が届くまで―

 柔らかな春の日差しがテラス席を優しく照らしていた。

 頬を撫でる風はまだ少しだけ冷たくて、季節が冬から春へ移り変わったことを教えてくれる。

 テーブルに置かれたアイスコーヒーの表面を小さく揺らした。

 私は腕時計へ目を落とす。

 約束の時間まで、あと五分。

 昔から待ち合わせには早く着く性格だった。

 時間に余裕を持つこと。

 身だしなみを整えること。

 準備を怠らないこと。

 競技チアを始めた頃から、それは当たり前になっていた。

 ふっと小さく笑う。

 もう誰に注意されるわけでもないのに。

 その習慣だけは、まだ体に残っている。

 テーブルの上でスマートフォンが震えた。

『あと三分!』

 画面には、美咲先輩の名前。

 思わず口元が緩む。

 競技チアを始めた高校一年の春。

最初は、こんなに夢中になるなんて思ってもいなかった。

 放課後も休日も、気づけば体育館にいた。

 もっと高く跳びたい。

 もっと上手くなりたい。

 その一心で、気づけば大学でも迷わず競技チアを続けていた。

 そして、そこで出会ったのが美咲先輩だった。

 私が一年生で、美咲先輩は三年生。

 競技チア部のキャプテンだった。

 誰よりも厳しくて。

 誰よりもストイックで。

 誰よりもチームのことを考えている人。

 最初は正直、苦手だった。

 練習中は一切妥協しない。