BLUE YELL ―その声が届くまで―

 公開練習当日。

 私は約束の三十分前には、東京ノースレイヴンズのホームアリーナへ着いていた。

 ……早すぎたかもしれない。

 そう思いながらも、足は自然と入口へ向かう。

 ガラス張りのエントランス。

 大きく掲げられたチームロゴ。

 青と白を基調とした館内は、まだ静かな空気に包まれていた。

 ここが――。

 東京ノースレイヴンズ。

 美咲先輩が、新しい夢を見つけた場所。

 そして。

 私が、もう一度チアと向き合うかもしれない場所。

 大きく息を吸い込み、ゆっくり吐く。

 その時だった。

「凪!」

 聞き慣れた声に振り向く。

 スタッフジャンパーを羽織った美咲先輩が、小走りでこちらへ駆け寄ってきた。

「ごめん!待った?」

「いえ、今来たところです。」

「嘘。」

「三十分前には着いてる顔してる。」

「……なんで分かるんですか。」

「分かるよ。」

 美咲先輩は笑いながら私の肩を軽く叩いた。

「じゃあ、行こっか。」

 自動ドアがゆっくり開く。

 その瞬間。

 体育館独特の空気が、私を包んだ。

 ワックスの匂い。

 シューズが床を擦る音。

 ボールをつく乾いた音。

 遠くから聞こえる、

「ナイス!」

という選手たちの声。

 ――懐かしい。

 体育館の空気は違うのに。

 そこに流れる熱だけは、競技チアをしていた頃と同じだった。