暗闇に爪を立てる

色褪せたハミングが暗然とした街路樹を通過する。
猫撫で声の残響と息を殺した金平糖が
乳白で埋められていくから、
かつて愛した人の名前ですら思い出せない。

砂時計をひたすら眺める昼下がり。
傲慢なラビリンスの挑戦状がひらり、ふらり、さらり、ひりり。
白い首筋をなぞるとムスクが香り、
会いたいと溢した言葉は変色し、
不眠症のらいおんは再び脱走を試み、
眩暈はすぐそこでニタニタ笑い。
そうして、雨に濡れた廊下に取り残されたままでいる。

かなしい声を出してみてごらんよ。
奏でてごらんよ。
寂しい忘れ物と肩を寄せ合っていればいいじゃない。

額から枝が伸び、花を咲かせる季節。
紅茶にメランコリーを垂らして気取る唇は青く、
今日も悲鳴をあげる胸椎。