真夏の一夜は恋の始まり(新装版)

 「それは嫌ですね。」

 これは正直な気持ちだった。自分じゃない方がいいんじゃないか⁇とどこかで思いながら、どこにも行ってほしくない自分がいる。他の男と花凛がと考えるだけで苛ついてきて、それは嫌だとハッキリ言える自分がいた。

 「じゃあ俺だけを見てろ。どこにも行くなって言うしかないだろ。」

 そう言い放つ宮内さんは自信満々だ。いつも思うが、宮内さんのこの自信は一体どこからくるんだろう⁇とある意味感心する。
 バツイチで前の結婚に失敗してもめげずに女関係の絶えない宮内さん。宮内さんの自信を俺に三分の一でも分けて欲しいと常々思っている。

 不安がなくなるいい方法を教えてやろうと自信満々な宮内さんはまた口を開いた。

 「何ですか⁇」

 どうせろくなことじゃないだろうと俺は話半分で聞き返した。

 「それは早く既成事実を作ることだ。」

 やっぱり…。思った通りろくなことじゃなかった…。

 「そんなこと出来ませんよ。宮内さんじゃないんだから…。」

 ハーと溜息混じりに言う俺に「何でだ?それが一番いいだろ。」と宮内さんは不満そうだ。

 「やっぱり宮内さんに相談した俺がバカでした…。」

 先輩に向かって何だその口の聞き方は。と宮内さんは俺の首を絞めてプロレス技をかけた。

 はー。結局何も解決しない。でもまあ少しは聞いてもらって楽になったか⁇はっきり物言えない自分の不甲斐なさにまた自暴自棄になっただけという気もする…。

 俺はまた深くため息をつくのだった…。