彼の視線はじっと留まった。
息すら止めて、微動だにせず。
やがて、キリキリと拳を握る。
「……地下の……売人」
低く呟いた唇は、そのまま声もなく、ゆっくりとそれをかたどった。
『コロス』、と。
「……ユキさん」
私が彼を呼べば、気が付いたように手の力を緩めた。
「酷いことを……されました。でもシトウの紫藤が、助けてくれた」
「………」
「怖いんです。だから私、行きます」
耳鳴りがする。
嫌だ、嫌だと叫ぶ心を無視して、口だけが嘘を塗り重ねた。
「俺が……守る、から」
「………」
「何に変えても、何を失っても」
「………」
「俺は、お前しか要らない……っ」
「……いいえ」
ユキさん。
それは違う。
ユキに必要なのは、私だけじゃない。
ユキや、サンコン。
バンに、潤、リンコ。
みんなのきらきらとした笑顔を包む……
ユキの作った、この場所。
――私も、ユキさんの大切なものを、守りたい。


