余所者-よそもの-【 3 】



一歩足を踏み入れた瞬間、よく知った匂いに包まれる。

胸が痛くなるほど、残酷で優しい香り。


ずっとずっと、ここに帰ってきたかった。

それなのに。


暗い通路を進むたびに、見えない泥が足裏に纏わりついたみたいに足が重くなった。


停止している背面の水路が、ぽちゃん、と雫の音を立てる。


開店前のこの時間。

サンコンはきっといる。


ユキや潤やバンはいるかな。


……できれば。

サンコンだけだといいな。


自分の口から直接伝えるのは、少し怖いから。


L字の角の、突き当たり。

ここを進めばフロアに出る。


煌々と温かい黄色い明かりが漏れていた。


フロアへ、出る……その前に。

泣き出したいとどうしても歪む顔を、両手で覆った。


唇を噛んで、痛みを確かめて。


一度だけ大きく息を吸い込み、そっと息を吐き出しながら手を下げれば。


「………」


この情けない顔に、見えない仮面を被せて。



やっと、足を踏み出した。