「どうして……こんなことするの」
シドは私の行動を咎めるでもなく、ゆっくりとした仕草で煙草を吸い込んでいた。
「何度も同じことは言わねぇ」
「………」
「お前を奪う場所は、消す」
「………」
「存在ごと潰してやる」
理解が出来ない。
シドの言ってることの、何ひとつ。
それでも本気で言っていることだけは伝わってきた。
だからこそ、血の気が引いた。
ふいに、何度も何度も聞いた千景の言葉が頭をよぎる。
――『アイツ、狂ってる』
ガタガタと、身体の震えが強まっていく。
「怒るなよ」
シドは私の髪を撫でた。
「何が不満だ」
なんてことないような仕草。
私を優しく抱き寄せる手つき。
そのどれもが、かえって底知れない恐怖を呼び起こす。


