――――……
――…
――キン。
静まり返った部屋に、ジッポライターの音が虚しく響いた。
煙草に火がつき、白く重い煙がゆったりと立ち上った。
重い身体を、ゆっくりと起こす。
「わたし……帰る」
「………」
返事はない。
床に散らばった服をかき集め、肌を隠すように身に着けた。
けれど指先がガタガタと震えて、シャツのボタンがうまく留まらない。
「………」
シドが床にしゃがみ込んだ私の前にやってきた。
煙草を口に咥えながら、上手くできない私の代わりにボタンを留めた。
「………」
「どこに帰る」
どこに、って。
今更そんなことをどうして尋ねるんだろう。
「……An――……」
「言ったろ」
「……なに」
「俺から離れるなって」
さも当たり前の話のように、平然とした顔をしているシド。
私には、意味がわからない。


