「シド。私は、シドを一人にはしない」
視線を合わせないまま、伝えた。
「だって、シドは……あの時の私を、一人にしなかった」
タカが死んだとき。
彼が立ち上がらせてくれたから、今がある。
だから今度は、私の番。
「だけど、」
シドが私の顎をそっと掴んで、正面を向かせる。
強引に交わされた視線に、それでも私ははっきりと言葉にした。
「こういうことは、しない」
そばにいることと、体を許すことは違う。
「……私は、カエデさんじゃないよ」
私は、彼女の代わりにはなれない。
向き合う私に、シドはまっすぐに視線を絡めたまま、静かに返事をする。
「ああ」
――直後。
「……っ」
逃げる暇もなく、唇を塞がれた。
「お前は――」
強引に奪われる、息。
重なり、混じる熱い吐息の中で、シドが低く囁く。
「カエデじゃない」
「……シ、ドっ」
「だからだ」
逃げても、逃げても。
容赦なく、何度も唇と吐息を奪われた。


