「悪かったよ」
シドの片腕が、私の頭をすっぽりと包む。
耳元に打ち付けられる切なげな声に、私はようやくまともに呼吸をすることができた。
「なにが……?」
「街で、お前を殴った」
「うん」
「あのとき俺が手放したから」
「………」
「そのせいで、壊されちまったんじゃねぇかって」
そう言うと、シドは枕の横に片腕を立てて、私を真上から見つめた。
鼻と鼻が触れる距離。
熱く湿った瞳をしていた。
「今度こそ、守るって決めたのに」
独り言のように呟くと、シドは目を伏せた。
私の唇に視線を這わせてから、ゆっくりと近づいてくる。
「……シド、」
私は顔を背けた。
縋るように迫ってきた唇を、拒んだ。
シドは、寂しいんだ。
カエデを失った心の傷が、癒えてない。


