――――……
――……
車内を満たすのは、息苦しいほどの沈黙。
シドは私を後部座席へ押し込むやいなや、無言でハンドルを握り、車を発進させた。
二人きりの車内。
多夜の姿すら、ここにはない。
ガタゴトと揺れるシートの上で、ズキズキと痛む肩をそっと押さえる。
シドに強く掴まれたから、痛いのか。
それとも。
脳裏に焼きついた、千景の壊れた腕を思い出して痛いのか。
……どっちなんだろう。
しばらくして、車が停止した。
シートベルトを外す音がして、運転席のドアが開く音が続く。
車がわずかに揺れるのを感じると共に、シドが車を降りたことを確認した。
エンジンはかかったままだ。
俯いていた顔を上げると、
――ピー、と隣のスライドドアが開く。
「………」
ドアが開ききるまでの時間が、やけに長く感じる。
私はごくり、と、生唾を呑み込んだ。
背筋に嫌なものが、ぞわぞわと這い上がった。
怖くて、怖くて、仕方がない。
私のことも、千景みたいに殴るのかな。
それとも前みたいに。
私の首筋に歯を立てて『カエデ』って呼ぶのかな。


