「いいや。退け、野間。……殺す」
低い声を打ち付けたシドに、野間は冷静に答えた。
「ダメっす。Z地区のガキが集まってきてる」
「蹴散らせ」
「シトウ側の到着は10分遅れる」
「………」
「あとは、僕が」
野間がそう言うと、シドは開きかけた口を閉じた。
やがてペッ、と血の混じった唾を吐き捨てると、
「………」
その赤黒く光ったような鈍い瞳を、やっと私に向けた。
「………」
シドが、一歩。
また一歩と、こちらに近づいてくる。
私は目を逸らすことが、できない。
声も上げられず、動けないでいる私の手前では。
千景と野間の交戦が静かに始まっていた。
野間はシドの歩む道を拓くように。
千景を殴り、彼に殴られている。
そんな彼らを尻目に、やがて目の前に立ったシド。
私の身体は、恐怖でガタガタと震えだす。


