「トチ狂ったヤツの話は聞いてられねぇ」
「馬鹿言うな」
「ああ?」
「お前も、コッチ側だろうが……ッ!!」
二人の距離が簡単に縮まった。
振り上げた拳が、再び衝突する――……
そう予感した、瞬間。
――パシッ。
乾いた音とともに、千景の拳が突然止まった。
振り下ろしかけていたシドの拳も、その寸前でピタリと止まる。
「……紫藤さん。ここまでっす」
千景とシドの間に、割り込んだ男。
正面から千景の拳を受け止め、シドには背中を向けていた。
右腕の猛々しい龍が、千景の拳を喰らう。
――野間が、静かにそこに立っていた。


