余所者-よそもの-【 3 】



音のない、歩行。

彼の声だけが、奇妙に響く。


千景は玄関とは逆の、ベランダへ向かっていた。


誰かが、来た。


「……誰が?」

「………」

「……ねぇ、千景」


流れていく天井から、視線を千景へ移す。

見上げた先の彼に、小さく小さく尋ねた。


「………」


私を抱える彼の腕に、ぐっと力が込められる。



「多夜」



その名前に、私は声を忘れた。

ビク、と震えた身体を、千景の腕が受け止めていた。


「大丈夫」

「………」

「何も心配しなくていい」


そう言った千景の視線は、私と交わらない。

鈍く光るその瞳は、もういつもの千景の幼い目つきではなかった。


濁りのない冷たさを孕んだ目。

昨日までの千景が、どこにもいなくなった気がした。