それは突然。
玄関からだった。
――ドン!と重たい音が、響く。
何かがぶつかったような物音に千景と私は目を見合わせた。
「………」
「………」
千景は静かにお箸を置き、音もなく立ち上がった。
足音を殺したままキッチンへ向かうと、目の前にある共用廊下に面したすりガラスの窓を少しだけ開ける。
「――――……!!」
外から声が聞こえてきた。
デックの声だった。
うめき声のような、言葉にならない声。
千景はすぐさま窓を閉じると、こちらにやってきた。
「……なに?」
音を立てない千景に、声を潜めて尋ねた。
「………」
千景はすぐには口を開かない。
「………」
心臓が徐々に早くなる。
その顔色だけで、何かが起きたのだとわかる。
千景が私の腕を引いた、と思った瞬間。
立ち上がる間もなく、私はすくい上げられるように千景の胸の中に横抱きにされていた。
「きた」


