余所者-よそもの-【 3 】



おにぎりは、千景の好きな食べ物の一つだ。

だけど私はある日、気が付いた。


彼が『好きだ』という食べ物は、どれも彼が食べやすいもの。

おにぎりだって、手でそのまま食べられるから千景にとって楽なんだ。


きっと千景の本当に好きな食べ物は、他にもたくさんあるはず。

だから私はお米が炊き上がる間、おかずをいくつか準備した。

卵焼き、ウインナー、サラダにお味噌汁。


「いい匂い」

「もう出来るよ」


匂いにつられて起きてきた千景。

私が高い戸棚から食器を出そうと踵を上げて手を伸ばすと、「僕が取るよ」と、私の頭上を軽々と越えて先に食器を掴んだ。


「これと……これ?」

「うん。ありがとう」


千景が配膳を手伝ってくれたおかげで、あっという間にダイニングテーブルに食事が並ぶ。

そうして揃って席に着くと、千景は自分の前に置かれた一膳のお箸をじっと睨みつけた。


「………」


お箸は、千景の天敵だ。